(世界的な)ソフトウェア産業における生産手段の収奪/まるこさんのお言葉

1. いづこも同じ秋の夕暮れ
 昨日、ヨーロッパからのお客さんとランチ、会議しました。
 ヨーロッパのソフトウェア開発ってのは、きっちりかっちり進んだソフトウェアエンジニアリングをして、UMLもEAも使いこしてAutoSarの巨大な規格を日々議論する素晴らしい人ばかりなのかと思っていたら、全然そんな状況じゃないって話。日本と同様に安い単価で人を入れて、でたらめなコードが大量生産されている。ドイツの自動車メーカーもそうらしいぜって話でした。

 僕らが日本の組込み系はダメだ、SIerは悲惨だ、Excel方眼紙がー、と日々Twitterで文句言ってるようなことが実はヨーロッパでも起きている。ヨーロッパに避難してソフトウェアの職を見つけられたらハッピーでわけではないらしい。

2. まるこさん

 元旦が誕生日の40代の独身女性のまるこさんという方がTwitterで反原発運動の影の部分 - 広告代理店が主導する反原発運動のウソ - みたいなのを糾弾されていました。南の島に移住されてその後どうなったのか知りませんが、衛藤利恵さん、はるさん、田中奈都先生などと並んでいろいろ影響を受けた方です。
 彼女が「資本主義が他国に侵攻して、最初にやるのは食糧生産手段の収奪だ」と書かれていました。自給自足の農業を商業的な農業生産に切り替える。サトウキビや綿花に切り替えて農家の収入を増やして経済的な豊かさを与える代わりに、自分たちが食べる食糧を生産する能力を奪っていく。確かにそうです。サトウキビなんていくら作ったって、それを食べて独立して社会を運営していけない。世界的な資本主義に頼らないと生きていけない仕組みをばらまいて、頼らざるを得ない人々から経済的な収奪を進めていく。

3. ソフトウェア産業における収奪

 ソフトウェアというものは、設計者とプログラマだけで産業として成り立つことは少なくて、組込み系であればハードウェア生産者の中で、あるいは共同して働かないと金銭すら得られない。ビジネス系であれば、そのサービス提供者:銀行や証券や流通などと共同して働かないといけない。だから、農業のようにもともと独立して価値のあるものを作ったり、金儲けのできる職業ではないです。
 しかし、独力で金儲けさえさせてもらえていない。しかもヨーロッパでさえも同じ状況らしい。これはおかしいです。

 どう考えても、金儲けをしているのは人材流通をしている会社であり、それに乗っかって人の売り買いをしている層です。価値のあるソフトウェア、価値のある労働を売るのではなく「ご予算はいくらですか。でしたら弊社のランク3のものを3名、3か月常駐させます」なんていう仕事を当然のような顔をしてやっている層。リクルートと広告代理店に、僕らはソフトウェア開発をして収入を得る手段さえ奪われてしまったんじゃないだろうか。
 
4. 個々の強さを

 会社に「ここの案件、常駐で3か月入ってくれ」と言われて、死兆星が見えると、デスマデスマと騒ぐ。これが日常的な笑い話にしかなっていませんが、それを断れる強さを身につけたい。こういう仕事はこいつでなければ担当できないという強さ。安い人工が何十人でかかってきても、こっちは少人数で跳ね返せるぜという自信やら実績。
 結局、僕はまるこさん/奈都先生/利恵さん/一色登希彦先生のように南の島や外国や紀州に避難して日本の衰退を待つという対策が取れなかったので、せめて、ソフトウェア産業をまともにすることで社会を正すことができないものか。そう思う三年後の卯月であります。