早川由紀夫先生の3つのレベルの災害対策

群馬大学教育学部の火山地質学者、早川由紀夫先生が話題となっていますが、僕は早川先生は3つのレベルの災害対策をされていると捉えています。ブログやTwitterなどでご本人も言明されていると思いますが、自分なりの捉え方をまとめます。

 (3)はやっと気付きました。(2)に気付いてない人も多いんじゃないかなあ。

(1) 目の前の災害状況の捕捉と対策
 ご自分の放射線量の測定と、膨大な公的機関、民間からの測定データを、分かりやすくマップにして視覚的に表現する、そして適切な対策(0.5以下を除染)を示す。。。これは当然だれにでも見える活動です。

(2) リスクを伝える
 正しく=正確な表現で、ではないです。
 「何uSv/h。ガンになる可能性は何%高くなり危険です。稲作も汚染される可能性が高くやめるべき」→この書き方ではフォロワーは数百人程度で止まるでしょう。

 「毒米を作る農家は○○すべきだ」「ねじり鎌一揆」「福島から嫁はもらわない」
 正しい表現じゃないんですよ。確かに暴言。違法スレスレ。でも、これでなければ伝わらない。フォロワーも増えない。だから「正しい」表現ではなく、インパクト重視。社会的に問題視されることを狙った「伝える」ための表現なのでしょう。逆に、最初の「正しい」表現だと、福島の人に伝わる情報は、「正しくない」情報に変質してしまう。

 制御工学で言うと、いったんオーバーシュートさせて狙った値に速く収束させるような制御を可観測でも可制御でもないシステムで行おうとしている。ゆっくり穏やかに制御していると、制限時間オーバーになっちゃうから。


(3) 情報の伝わり方のデータを取る
 早川先生は、どのような情報の発信をすればどの程度の人に、どのように伝わるかを常に定量的に記録されています。Tweet1回でフォロワーが何人増えて、何人がフォローをやめるか。訓告の日に何人フォローが増えたかなど。

 住民への情報の伝わり方は捕捉できないでしょうが、だいたいの目処を記録されている。福島の方からのメンションが増えることも記録されています。つまり、福島の人に伝わったかどうかを重視されている。(感情論で福島の人からのメンションを捉えていないです)
 新聞、テレビ、電話くらいしか伝える方法がなかった20年前の雲仙や、水俣病の時とは通信手段がまったく違っているので、過去の知見は役に立たないのでしょう。「次の」大規模災害時に備えて、インターネット時代のリスクコミュニケーションの定量化をされているのでしょうか。

 311が人類最後の大規模災害じゃないでしょうからね。

 (2)は、目の前の災害から住民を救う活動、(3)は、将来に備えた救い方の研究。


<311後にプランを立てたのではないだろう>
 311以降、急に思い立って活動されたのではなく、雲仙のご経験をもとに社会的な障害が絡む大規模な災害に対してどのように取り組むべきか、どのようなデータを取るべきか、大まかなプランはお持ちで、それを原子力災害にあてはめて活動されているように思います。
 また、科研費に対する研究成果は(3)が主なのだろうと思います。だから、放射線マップは研究対象じゃないのでしょう。もしかすると地質学者としての地位を捨てて、リスクコミュニケーションを極める道を選ばれたのかもしれません。


 とてつもなく頭がよいのは当たり前として、計画的、論理的な行動をされる方だなあといつも思います。
 こんな方が日本にいてよかったと、5年後、10年後に言えるといいのですが。