ソフトウェア産業の暗い未来 / 経済学の船出(安冨歩)

1. 日本のソフトウェア産業の危機

 以前に下記のブログ記事を書きました。

論理が失われた街で
http://d.hatena.ne.jp/BritishRabbit/20130720

日本のソフトウェア産業の本当の危機について
http://d.hatena.ne.jp/BritishRabbit/20130721/1374418108

 こういう現象の根本は、安冨歩さんの「経済学の船出」や、マイケル・ルイスの「世紀の空売り」に書かれいることといっしょで、組織の中の人が他人を騙すと得をする。詐欺、ゆすり、たかりは労力少なくても儲かりますからね。それを国が産業として「詐欺立国」をしている。他人を騙しているうちに、自分が言っていることの何が本当で、何がウソなのか分からなくなってします。もう、口を開くとどうやって嘘をつこうかと考えるのが習性になってしまっている。

2. ソフトウェア産業の特質

 ソフトウェアというのは非常に珍しい製品分野で、純粋に人間の精神活動の成果物だけで成り立っています。原材料がないからそこに金はかけられない。設備投資って言ったって、いまはCore i7 に16GBのメモリ積んだすんげー高性能のPC プラス フルHDデュアルディスプレイだって30万円しないでしょ?僕らが2〜3日、デスクで居眠りしたら飛んじゃう金額です。ツール類やら作業机やらネットワークやらはかなりコストかかるのは確かだけれど、最後に残る神髄は人間がいかに頭を使うか。設計にしろ運営、管理にしろ、最後は「いかに論理を突き詰めるか」。そこに、論理をねじ曲げるのが俺の本業だぜって顔に書いてある人たちが現れる。仕事のコアを破壊される。

 職場で論理的な議論ができなくて、なにもかもが出鱈目な管理、運営、設計になっていくのが今のソフトウェア開発現場です。設備投資などでは補てんが効かない。そこが機械製造とは違う。違うんだけど、会社組織としては違うことを認めようとしない。認めたら組織が崩れちゃうから。
 僕は根が正直なので、そういうことを思ったらお客さんにもそのまま話しちゃうんですが、自分の意見として経済、社会や業界を語っても説得力がないので、そこはあれですよ。虎の威を借りる狐と言いますか、「東大の東洋文化研究所安冨歩と言う人がいましてね。彼が『経済学の船出』という本に書いているのですが、、、」というリードで話しはじめて、自分の意見じゃなくて経済の専門家の意見として、好きなことを話しちゃっています。専門家の名前って便利だね。

3. 暗い未来

 僕が見るに、日本の製造業のフトウェアに関してはもうスレッシュホールドを超えちゃって、投資しても儲からないから投資を絞るか、だらだら大赤字を出してもほかの機械製造の利益をつぎ込んで大量人員投入を続けるしかないのかなと思って見ています。

 そういう業界から逃げたいなとは思うのだけれど、まあ、ビジネス系、Web系、オープン系のスキルはなく。海外に逃げると言っても原発のない南半球のオーストラリアはそもそも製造業が全滅状態で職場もなく。リモートで日本のソフトウェア開発やる?人月単価30万で?それもつまーーんない、末端のコーディングで?それもめげる話です。

 自分で金が稼げる、ソフトウェアの価値を作れる産業を作れないと、「原発はんたーい」だけでは食っていけない。暗い未来ですね。

向精神薬の投与に「ジェラルド・ワインバーグのテスト」を。

1. IT系職場のメンヘルは日常茶飯事
チダイさんという方の「向精神薬なんか投与しなくても、カウンセリングで治る」という発言に、水無月さんが「統合失調症/精神分裂はカウンセリングでは治らない」と反応されていました。本格的な統合失調症は薬が必要、は分かるんだけど、なんかモヤモヤする議論です。

今の職場にもメンタル的にヤバい人がいます。目覚まし時計を3つかけても朝、起きられない。お客さんとの会議の日の10時頃に電話をかけても電話に出てくれない。妙に落ち着きがなくて目がギラギラしている。

前の職場にもいました。とにかく休む。ひどい時は週の半分くらいは休む。目がどろーんとしている。昇進のためにいろいろと指導してあげても「それ、もともとダメな仕事なんですよね」「やって意味あるんですか」みたいなことを言い出す。(おまえ、この会社にやって意味のある仕事なんてあるわけねえだろ、というセリフを飲み込みつつ指導する立場の辛さ)。
あるいは、元気で良い働きをする人だなと思っていた人が「彼はメンタルで休んだ経歴があるから」みたいなことをこそっと影で言われている。

2. 向精神薬を飲んで大丈夫なんだろうか
一度、向精神薬を飲んで職場復帰して、うーん、ストレートな表現をすると昇進した人っているんだろうか。たとえば、係長クラスの時にSSRI, SNRIなどをガッツリ飲んで部長になった人。いないでしょ。いないでしょ。SSRI飲むってことは、サラリーマンとしての人生捨てますってことなんですよね。もう出世もまともな業務をさせてもらう機会も捨てて、廃人になっても自殺は防ぐ、というのが向精神薬の効能なのではないかな。

それをサラリーマンとして受け入れるかどうかってのは、よっぽど慎重に考えなければいけない。簡単に「今は良い薬があるから」などと飲ませてはいけない。

3. ワインバーグのテスト
ソフトウェアの信頼性、品質を測る簡単なテスト方法に「ワインバーグのテスト」というものがあります。たとえば、飛行機の自動操縦システムのソフトウェアを作ったら、作った人にその飛行機に乗ってもらう。自動車の自動運転であれば、システムをコーディングした人が乗る。うーん、、、作った人だと危なくても乗っちゃうだろうから、子供をその自動運転のクルマで保育園へ送り迎えさせる。3年間。拒否したらテストNG。

あるいはマイクロソフトの「Eat your own dog food」。お前が作ったメシは、まずお前が食え。まったく新しいOSを開発しているなら、お前がそのOSを使え。開発段階で「使えるようになってきた」というなら、そのOSの開発自体で、全員がそのOSを使え。(Windows NTの開発でデーブ・カトラーにやらされたらしい)

4. 向精神薬投与にもワインバーグのテストを
向精神薬を自分の子供に投与してるよ、という医者に会ったことがありません。60歳くらいのお医者さんなら30代のサラリーマンのご長男がいてもおかしくないし、30代のサラリーマンなら「メンタル系で産業医に相談」みたいな場面は一度くらいは経験してるかと思います。40代のお医者さんなら中学生くらいのお子さんがいてもおかしくないですね。「うちの子がいじめにあって精神的に辛い時にパキシルを飲ませてあげたら、もうびっくりするくらい良くなって。ですから心配ないですよ」などと体験談を話してくれれば安心ですが、そんな医者いないですよね。

医者もプライベートは話せないのでしょうが、どうも不自然。精神科医の子供がバリバリSSRI, SNRIを飲んでいる姿をご覧になった方、ぜひ教えて下さい。

人魚の森/高橋由美子 メモ

高橋由美子の漫画「人魚の森」シリーズの設定のメモ。

人間が人魚の肉を食べると、次のうちのどれかになる。
(1) 不老不死になる
(2) なりそこない(化け物)になり、永遠に苦しみながら醜い姿で生き続ける
(3) 死ぬ

人魚は、
(4) 年を取って老化する
(5) (1)で不老不死になった人間(娘)を食べると、その娘と同じ年齢と容姿に若返る
(6) 食べられないと、醜い人魚の姿になり海に戻る

真魚は(5)のために人魚の里で育てられて、15歳の時に人魚の肉を食べさせられた。
湧太は偶然人魚の肉を食べて人間の社会の中で生き続けた。

人魚が人間を食べて、人間が人魚を食べると、お互いに永遠に生きられる、、、ように見えるけれど、人間は一度不老不死になってしまえば人魚の肉はいらなくなるし、人間は人魚の肉を食べても死んだり、なりそこないになるのがほとんどなので、そんなに単純ではない。

人魚側も、人間の娘が不老不死になる確率は低いけれど、秘密の里に隠れ住んでいる立場なので、大量に人間の娘をさらってきて養っておくわけにもいかず、真魚を食べられないと海の醜い人魚に戻ってしまう瀬戸際だった。

今こそ、満洲国の研究成果を!

雪害で感じたこと。この無政府状態
2/20も雪になるそうで、まだまだ予断を許さない状況ではありますが。

山梨の雪害対策について、一色登希彦さんが「日本は無政府状態だという認識をきちんと持とう」とおっしゃっていました。これは原発事故後にずっと僕も思っていたことで、国とか政府、自治体、国民が全部狂っているのは確かだと思います。僕を含めて。

歴史から学びたい
そういう状況で、どう振る舞うべきか。これは難しい問題です。過去に日本人が海外に大量に移民して悲惨な状況になったブラジル、「ソテツ地獄」はアルゼンチンへの移民でしたっけ?

それで、国や地域がすっぽりダメになった例を考えたことがあるのですが、満洲国ってそうなんじゃないでしょうか。逃げ遅れた方の「チャーズ」という悲惨な話も残っていますし、国が無くなったわけですから。

そこで逃げた人、残った人がどういう割合でいて、どういう行動をとるのが安全だったか。そういう統計的な情報を欲しいと思うのです。

タガメ女」なんていうテレビ批評してる場合じゃねえだろう。

今、このエルゴノミクスキーボードが強烈に欲しい

今、このキーボードの英語版が強烈に欲しいのです。

http://www.microsoft.com/hardware/ja-jp/b/sculpt-ergonomic-keyboard-for-business/5KV-00006

 日本で英語配列版が簡単に(Amazonで)買えるようになるのはもう少しあとになるでしょうが、海外通販しようかどうか悩み中。

現在は仕事でも自宅でも、主にこのエルゴノミクスキーボードを使っています。

http://www.amazon.com/Microsoft-A11-00337-Natural-Keyboard-Elite/dp/B0000642RX

これを使い始めて何年なんだろう。秋葉原の駅前にあったオームテクノロジーとかいうOS/2専門店で買ったのがはじめだから。ってことはWindows95が出る前後か。20年近いかもしれない。映画「マトリックス」のネロが自宅のPCで使っているキーボードがこれですね。

これの唯一の欠点が、テンキーがついてるので横に長いことでして、テンキーが分離できる新しいエルゴキーボードが出たので買いたいのです。でも、日本のアマゾンだとまだ日本語版しか買えない。


しかし、「日本語DOS/Vキーボード」っていう規格を作った奴は馬鹿なのではないだろうか。ぜったい誰も使わない仮名入力のためにドメスティックなキーボード作りやがって。しかもスペースキーが異常に小さくて、さらに重要なエンターキーを縦長という打ちにくい形状にしてそれでOKだと思ってる。さらにさらに半角/全角なんていうドメスティックなキーを付けやがって。右のAltをIMEのON/OFFに割り振れば済む話なのに。アホな話です。


あ、そうそう。昔は英語キーボードを使って、CtrlとCapsを入れ替えて、右AltキーをIMEのON/OFFに割り当てるのって、へたすると2〜3日かかってたけど、Windows7の今となっては簡単です。キーボードドライバは、キーボード接続するだけでインストールされて、それを更新するだけだし、CtrlとCapsの入れ替えはMicrosoftのエンジニアが配布したソフトCtrl2Capで安定してできる。右AltをIME ON/OFFに割り当てるのはAutoHotKeyで楽にできる。いや、いい時代になったものです。

仕事場の賃貸料

めでたくない。まったくめでたくないので、正月の挨拶は省略させて頂く。

1. 仕事が拡大してますな
 なんだか、正月から人が増えるのですよ。僕を入れて合計で5人かな。2案件で5人。それで、オフィスの賃貸料なんかも考えないといけないのですよ。うちの会社のオフィス、もうぎちぎちだから。

2. トム・デマルコやらスティーブ・マコネルやら
 ソフトウェアの仕事のスペースって、ひとりあたり7平米確保しないと生産性上がらないんだって。これはもう明白。でもね、僕の周囲では4平米ももらえないんじゃないかな、普通は。ひどい現場では、その狭い机に二人が座って仕事してます。

 うちの会社のオフィスって坪単価2万円超えるらしいんだけど、都心だと1万5千円くらいは普通、首都圏では安くしようとしても1万円弱がいいところ。
 それで、名古屋なんてもっと安いんじゃないの?と思って検索してもたいして安くない。他の都市も対して安くない。

 徳島に行くと安いですよそれは。でも、徳島にオフィスを置くとそれはもうニアショアの世界になって労働力を安く買い叩く対象になっちゃう。

3. 横浜あたりの工場を買うのが安いんじゃないだろうか
 でもね、この不況でしょ?工場や商店なんてどんどん寂れてるじゃないですか。そういう寂れたところを安く買えないもんですかね。探してみると、横浜の港北区あたりのちょっと引っ込んだところだと400平米で5500万円なんていう物件があるんだよね。貸し工場も安い。

 改装費ってどのくらいかかるんだろう。改装費、引っ越し含めて1億円でどうにかならないもんかな。下らない会社を買収して多角化して足を引っ張られるより、その1億円で快適オフィス作ったほうが効果的な投資のような気がするんだけどな。

 外見、世間体ってのも大事な業界なので安さや実質的な仕事だけで決められないんだけど、人数を集めて仕事するソフトウェア開発部隊だけはそっちに移すほうが合理的なような気がするな。

子供の命を粗末にする日本の風潮はどのようにして醸成されたか

1. 歌舞伎
 バブル直後くらいでしたか。川崎や都内勤務だったのと子供が生まれる前だったので国立劇場やら歌舞伎座に年に数回は行っていたのですよ。正統派の歌舞伎ファンじゃなくてあくまで軽佻浮薄なにわかファンとして。ジーンズとTシャツで。
 歌舞伎を見始めるとすぐに気付くのですが、「主君や主君の子供を守るために親が自分の子供を殺す」という演目の割合がとても多い。これはビックリするし薄気味悪いです。歌舞伎ができた江戸時代ってそんな時代だったんだろうか。

2. 実は演目がフィルターされてた
 それで歌舞伎の変遷などを調べてみるとすぐに分かるのですが、歌舞伎ってもともと「かぶく = 奇をてらう」ような演劇なので、不謹慎な話や、いやらしいネタなんかが多かったらしいですね。目に余るので女性と男性が同じ舞台で演じることを禁じられて、男が女形やってるくらいですから。

 それがなんで「主君のために子を殺す」みたいな建前バリバリの演目が多くなっちゃったかというと、第二次世界大戦の時に軍部に演目をフィルターされちゃったそうです。国のために命を捧げる、自分の命だけじゃなくて子供の命も投げ出して主君=国のために尽くす。そういう演題でなければ上演させなかった。そこでフィルターされていびつになったそうです。

 これは落語も同じで、不謹慎な演目は記録を消されたらしいですね。昔はビデオなんか残せないから、演目が廃れたらそこで消えてしまう。

3. 社会や企業のために命懸けで尽くす、が日本人の本質だったのか?
 特攻隊やら桜花やら回天で戦争してた時にはそれはもうそうやって世論ごと改造したのでしょうが、そういう滅私奉公、全体のためには個人の命も生活も放棄するなんていうのが日本人の本質的な性質だっていうのはどうも違うんじゃないかな。もっとね、自分にとって都合が悪ければ大きな会社も地域社会も潰しちまえ、っていうのが「かぶく」の精神なんじゃないかと思うんですけどね。

4. 311後の日本社会はそれとはちょと違うけれど
 311後も自分の子供に平気で東北の野菜やコメを食わせて「政府が大丈夫と言ってる」「東北を元気にする」みたいなことを言ってる親も多いけれど、もともとの全体主義思想に加えて、「自分は何も知らなかったことにして、責任は誰かに押し付ける」という態度が加わってもうひどいことになってますね。全体主義と個人の責任逃れが行き付く先がこの社会か、と思ってみています。(見てないで早く逃げなきゃいけないんですが)